output43’s blog

誰かに都合よくいい感じで見せたい雑記

中山忍さんのこと

今週のお題「アイドルをつづる」
非モテの冴えない思春期の僕を支えてくれた素敵な人「中山忍さん」の思い出。

それは思春期で、日々何かに悩んでいた中学生のある日。クラスの「芸能通の女子」が、どこから仕入れてきたのだか、事務所非公認と思われる南野陽子の下敷き(紙でできたような下敷き)を僕に売りつけに来たときのこと。

芸能通女子「100円でナンノ下敷き売ってあげる。」

僕「ふふふ、僕はもうスケバン刑事公式下敷きを持っているのだよ。他を当たってくれたまえ。」

芸能通女子「ちっ。あ、そう言えば中山美穂の妹がデビューするんだよ。中山忍。知ってる?結構かわいいよ。」

僕「はあ(怒)?知らんがな。中山美穂には興味ないし(怒)!」

当時、アイドル業界ではナンノ派とミポリン派に分かれて覇権争いをしていた。一部でノリピー派も暗躍していた(個人の感想です。)。僕はもちろんナンノ派。顔もかわいいし歌声もかわいい完璧アイドル、ナンノ。僕より少し年上だったけど、中学生の僕は「このくらいの年の差は乗り越えられる。大人になったら結婚しよう。」と本気で思っていた(馬鹿である。でも、そういう気持ち、失いたくないなと思う今日この頃。やはり馬鹿である。)ナンノは実際人気あったと思うのだけど、週刊誌やらワイドショーが「南野陽子、生意気。」とか「南野陽子、わがまま。」とか言いまくっていたこともあって、クラスの女子は「中山美穂はいいけど、南野陽子は生意気だから許せないよね〜。」という訳の分からんことを言っており、ナンノ派は形勢不利状況であった。だからこそ!?ナンノ派の僕としては、ナンノコレシキ精神で打倒中山美穂をスローガンに掲げて日々過ごしていたのだ。そこに、中山美穂の妹がミポリン派として参戦である。また、戦う敵が増えてしまったのである。なんだその姉妹攻撃は。石野真子、陽子戦法か。岩崎宏美、良美戦法か。卑怯なり。2対1でも負ける訳にはいかない。改めて熱い決意をし思春期の日々を過ごすのであった。

それから時は経ち、「中山忍」という名前も記憶から薄れてきたある平日の午後。僕は家のベッドに寝転んで「TVガイド」なる雑誌を読んでいた。TVガイドは1週間分の番組表がついていて、更にドラマの情報やTVで放映する映画の情報、芸能人の情報などが載っている雑誌であった。2クール先のドラマの情報なんかも載っていたりして、ネットの無いあの時代は僕にとっての大事な芸能関連の情報源であった。ペラリ、ペラリとページをめくっていると、あるページで僕の手はフリーズした。めちゃくちゃかわいい子が僕を見ているのである。「なんじゃこりゃー、めちゃくちゃかわいい、かわいすぎる。誰?何?どういうこと?」混乱のままページ内に手がかりを探すと「中山忍」の文字が。「おお、中山忍って名前なんだあ。忍ちゃんかあ。いい名前だなあ。かわいいなあ。。。あれっ?えっ!えーっ!!」である。「全然おねーちゃんに似てないじゃん!!!そして、すっごいかわいい!!!」(お姉さんの中山美穂さんは「かわいい」というより「綺麗」だと思うのです。ぼくは「かわいい」が好きなので。)一瞬で忍ちゃんにハートを撃ち抜かれた僕。が、しかしである。僕には一方的に将来の結婚を決めているナンノがいる。ましてや忍ちゃんは敵チームの女。どうすれば、、、いや、おかしいぞ。もっと大きな視点で考えてみよう。どこぞの宇宙飛行士は言っていた。「宇宙から見た地球に国境はない。」って。「好き」という気持ちに、敵も味方もないよね。「好き」に国境なし。大きな声で好きだと叫んで生きようではないか!なんなら将来僕の義理の姉になるかもしれないミポリンも好きになればいいではないか!
というわけで、ロジカルに自分の気持ちに決着をつけ、改めて忍ちゃんが僕を見つめているページを見た。どうやらCDの広告らしい。もうすでに発売されているらしい。更によーく読むと、「初回限定盤にのみフォトブックが付く」とのこと。
やっちまったー、しまったー、出遅れた!これはやばい。と思った。もう世の中から初回限定盤が無くなっている可能性が高い。忍ちゃん、可愛すぎるからCD売れまくっていることは間違いないのである。こんな時こそ即行動。僕はタウンページを引っ張り出し、CDショップ(当時はどちらかというとレコード屋)に片っ端から電話することにした。「どこかのさびれた店とかに、ひっそり売れ残っているはず。」という一縷の望みをかけて。
1件目。
僕「もっ、もしもし、あの、お聞きしたいのですが、中山忍のCD売ってますか、あ初回限定盤の方ですっ。」
店員さん「ちょっと待ってくださいね。
、、、、、、、
もしもし、ありますよ。」
僕「えっ、あっ、あるんですかっ!!」
いきなりヒット!まさかの1件目で超希少CD発見である。
僕「すいません。それ欲しいんです。今から行くので取っておいてもらえますかっ!」
興奮を抑えられず話す僕。
店員さん「あ、まあ、取っておかなくても大丈夫ですよ。」
????????
どういうことなのだろう?何が大丈夫なのだろう?何をこの店員さんは言っているのだろう?取り置きの手続きが面倒なのか?中学生の僕は混乱しつつも
、大人と話すのも苦手なこともあり取り置き交渉を進めることはできず僕は
「今から行きますっ。」
とだけ店員さんに伝え電話を切ってCDショップに向かうことにした。

夕方の4時くらいだったと思う。僕はどうやってCDショップに行くか考えた。電話を掛けたCDショップは我が家から一番近いCDショップであったが、そもそも我が家は田舎のため、店までは、徒歩、バス、電車を駆使して1時間ぐらいかかるのである。店と我が家の間には山があり、バスと電車はそこを回避した交通網なのでちょっと遠回りなのである。山を越えていくのが一番近いのだが、そのための交通手段は車、もしくは自分の足。親に、この件で車を出してとは言えないので、結局自分の足のみ。僕はあまり悩むことなく山越えルートを選択した。おそらく、店に着く時間は「バス電車ルート」と変わらない、もしかしたら遅くなるかも、であったが一刻も早く忍ちゃんに近づきたい衝動が僕を突き動かしたのだ。財布を持って家を飛び出すと僕はとにかく走った。休んでは走りを繰り返し、とにかく店を目指した。(実際、グーグルマップで調べたら4kmぐらいだった。)山越え走行自体は辛いことではあるが、好きなものに近づいていく充実感もあり心地よい苦しさでもあった。ランナーズハイならぬアイドルハイ。もう季節は冬だったと思うけど汗をけっこうかいた状態で僕はなんとか店にたどり着いた。

店員を見つけて僕は話しかけた。
「すいません。中山忍のCDってどこにありますか?」
店員さんは、ああ、電話の人ね、という反応をして、売っている場所まで案内してくれた。
あった!初回限定盤CD。フォトブック付。忍ちゃんが僕を見つめてくれている。溢れ出る充実感。ちなみに、初回限定盤は5枚ぐらいあった。ここはやっぱり穴場やー!CDを持ってテンション高く、抑えきれぬ笑顔で会計に向かった。会計をしてくれた店員さんは、おそらく電話を受けてくれた店員さんなので、僕はこの興奮と感謝を伝えたく
「初回限定盤、買えて良かったです!!」
と話しかけたのだが、店員さんは
「よかったですね。」
と、決して感じ悪くはないが、若干テンションのギャップを感じる対応であった。なぜ?でも気にしない。目的のものが手に入ったのだ。僕は、忍ちゃん(CD)と一緒に意気揚々と帰宅の途についたのだった。ちなみに帰りも、山越えルートを歩いて帰ったと思う。気分が良かったからかとは思うけど若いってすごいな。なんだろう、この無駄な体力は。今は徒歩5分のコンビニでも車を使って行くというのに。

その日から、僕は忍ちゃんの出ている雑誌買ったり、テレビ見たり、CD聞いたりして、幸せな日々を過ごした。雑誌は目力で穴が開くほど見たし、録画したビデオは擦り切れるぐらい見たし、CDはレーザーで焼き切れるくらい聞いたと思う(イメージ)。忍ちゃんは、とても歌が上手、というわけでもなかったし、テレビに出ても、今にもカメラの前からの逃亡するのではないかと言うくらい超控えめだったけど、そこを何とか頑張っている姿に、頑張れー!と応援したり、なによりその奇跡的な可愛さにドキドキしながら思春期を過ごすことができた。忍ちゃんがいなければ、人生すべて終わっていたとか、今この世に存在しないかも、とかそんなことはないのだけれど、非モテで日々何かに悩み続け、悶々とした気分で過ごしていた思春期の僕に、「楽しい。」とか「ドキドキする!」とか「頑張ろう!」とかそういう気持ちにさせてくれた忍ちゃんは確実に僕の人生の一部を彩ってくれていると思う。感謝。そう考えるとアイドルってすごい職業だなあ。写真1枚だけでも会ったこともない不特定多数の人を幸せにできるのだから。アイドル万歳。思春期の思い出がよみがえって元気になった。やる気になれば山越えだってできる!頑張っていこう!と、自分を応援してみる。
おっしまい。

(以前書いたものを加筆修正してみた)