今週のお題「冬のスポーツ」
大学2年生の冬。僕は大学の友人たちとスキー場に行った、ある密かな決意を持って。
今の大学生はどうだか分からないのだけれど、当時の大学生は冬になったらスキー場に行くことが義務化されていた。明文化されていない法律があった。そんな時代。
僕は雪国出身でもないし、幼少からスキーを嗜(たしな)んでいたわけでもないのでスキーは下手なままだった。
本格的に始めたのは、大学1年生。でも、本格的と言っても、足繁くスキー場に通っていたわけではないので全然上手くならない。
※2日間滑る。→帰る。→コツを忘れる。→2日間滑る。→最終日にコツを思い出す。→帰る。→コツを忘れる。以下ループ、、って感じで、全然身につかないのだ。
一方、一緒に行く大学の友人たちは、
・大学のスキー講習(←体育の単位がもらえる)に参加していた
※僕は別の講習に参加していた。。。
・幼少からスキーをしていた
なんて感じで、うまく滑れる人が多かった。
そう、僕は、みんなから「出遅れて」いたのだ。
これは、冬にスキー場に行くことが義務化された時代において由々しき問題である。
やばいーーー!
今回の友人とのスキーツアーには、そんな状況の友人がもう一人いた。
友人A。彼もまた大学のスキー講習に参加しておらず、幼少期からスキーもしておらずスキーが下手だった。
僕らはこの問題を解決すべく、スキーツアー開始前に秘密の作戦会議を開催した。
「初日に、スキーが上手い友人に、
『上級者コース行こうぜ!ゆっくり降りて来れば大丈夫、大丈夫。ちゃんとサポートするからさ!』
って強引に山の上の方に連れて行かれて、結局ほったらかしにされて、へっぴり越しで降りてくる姿を晒していいのか!」
「コケて外れたスキー板を上級者に届けられて、『すいません。ありがとうございます。』って言いたいのか!」
「2日目に初心者コースをスムーズに滑れるようになって、それで満足していいのか!」
「楽しみがロッジの昼食だけでいいのか!」
熱く語り合う僕たちへたっぴーず。
そして、熱い議論を重ねるうちに、アイデアが舞い降りてきた。
状況を打破する!起死回生の作戦!を思いついた。
、、、、、
スキー場に着くと、僕と友人Aは他の友人たちに言った。
「僕たち、スキーあまり上手くないからさ、午前中は、スキースクールに入ってコツを思い出そうと思うんだ。で、みんなとは午後から合流したいんだ。」
友人たちにとっては突然の提案だったと思うが、
友人たちはそれを聞き入れてくれて、僕らを置いて山頂に向かって早々にリフトに乗り込んで行った。
僕と友人Aは嘘をついた。
午後から合流したい。は本当。
スキースクールに入る。は嘘。
友人たちを見送った後、僕と友人Aはロッジのスクール受付に行った。
スノーボードスクール受付に!
当時も、今と同じ様にスノーボードはあったのだけど、まだ全然主流ではなかった。
スキー場も
スノーボードの滑走範囲ってどこまでにする?
とか
そもそもスノーボードの滑走は禁止にする?
とか、色々悩んでいた時期。過渡期。
僕と友人Aは先の作戦会議でそこに目をつけた。
「これからスノーボードの時代が来る。」
「スノーボード、なんか不良っぽくてかっこいい。」
「今から始めれば、差をつけられる。」
「なんかモテそう。モテるに違いない。」
いざ、スノーボードスクール。
初めてのスノーボード。ドキドキ。
ブーツの履き方、ビンディングの使い方など道具の使い方の説明。
片方の足だけ固定しての泊まり方の練習。
リフトの乗り方、降り方の練習。
最後の最後に、両足を板に固定しての止まり方&滑り方の練習。
スキーとは違い、両足がガッチリ固定されてしまう恐怖。まあ、全然うまくは滑れない。でも、何とか初心者コースの下の方であれば、こけながらもそれっぽく滑れる様な感じに!
午後。
僕と友人Aは他の友人たちと合流した。
レンタルのスノーボードを片手に持って!
「どうしたの?スノーボード?」
驚く友人たち。
「ふっふっふっ。僕たち、スノーボードを始めることにしたのさ!」
(スキーとは違うのだよ。スキーとは!)
得意げな僕と友人A。
いざ。滑走へ。華々しいデビューへ!
グッバイスキー!ウェルカムスノボ!
モテの世界へGO!GO!GO!
僕と友人A、他の友人たちはリフトに向かった。
まずここで問題発生!
僕と友人A、全然進まない。スノーボードに慣れていないのでうまくスケーティングできないのだ。
のろい。とにかくのろい僕たち。呪われた僕たち。
何とかリフト乗り場にたどり着いて初心者コーススタート地点へ向かう。
そして、リフト降り場。
ここでも問題発生。
まあ、コケますわな。慣れてないもの。人間だもの。
でもここからが、勝負!
イケてるスノーボーダー!
時代の先端スノーボーダー!
ちょいワルスノーボーダー!
なんかモテそうスノーボーダー!
デビュー戦である!
で、ここでも問題発生。
ビンディングつけるの大変。慣れてないから。
スキーチームは当然のことながらすぐに滑れる状態。
僕たちは、端っこの方で腰掛けてビンディングのベルトの固定に悪戦苦闘。
待てなくなったスキーヤーの友人たちが次々と麓に向かって滑り降り始める。
「下で待ってるね。また、後でねー!」
「。。。。。。」
(くっ、負けるもんか!(何に?))
何とか板にブーツを固定。
いざ、デビュー滑走!
ズテッ!ゴテッ!グルン!ズズズズッ!
途中何度もコケながら、何とか麓(ふもと)へ。
最後の方は、何となく滑れている感じも出てた!どうだ!見たかー!
「なんか、大変そうだね。」
「怪我しない様に気をつけてね。」
スキーヤーの友人たち。正直な感想。
羨望の眼差し的なものは微塵(みじん)もない。
その後。
スキーヤーと初心者スノーボーダーでは、
リフトに乗って→下まで滑り降りる
までの時間の差が大きい。
(スキーヤーの方が圧倒的に早い。)
なもんで、結局、
スキーヤーチームとスノーボードチーム(僕と友人A)は、
お互いを見ることなく別々に自分達のペースで滑りましたとさ。
で、これは失敗談みたいだけど、僕の中では失敗談ではない!
確かに、うまくは滑れなかった。
ただ、
新しい遊びへの挑戦。
何となくかっこいい感じのスノーボードでの滑走。
全然うまく滑れなかったけど、麓の方ではそれっぽい滑りもできたぞ。
スキーヤーではなくてスノーボーダー。
テンションアップ。
とても気分の良いスキー場での時間。
これはどう考えても成功体験!
ビジネスでもそうだけど、
成熟した市場で競合ひしめくライバルと戦うのではなく、
未開拓の市場、これから成長する市場に早期に参入する!
っていうのは戦略としてとても良かったと思う。
あの日の彼らは「スキーが上手い」のであって「スノーボードが上手い」ではないのだ。そもそもスノーボードに乗ってもいないのだ。
どんなにへたっぴでも、
あの日、僕と友人Aはスノーボーダーとして最先端を行っていたのだ!!!
のだ!!!のだ!!!
まあ、
最先端を走っていた僕と友人Aが他の友人たちに追い付かれたかどうかはまた別のお話。
ううっ。ぐすん。
おしまい。