output43’s blog

誰かに都合よくいい感じで見せたい雑記

トリプルヨーグルトの恋

■トリプルヨーグルトの恋 私編 

「あー失敗した、何であんなことしちゃっちゃったんだろう。」
私は会社帰りの電車に揺られながら「今朝の出来事を思い出しては後悔する」のループを繰り返していた。
彼と同棲して3ヶ月。彼のおっちょこちょいな行動や言動に対する苛立ち、仕事がうまくいかない自分への苛立ち、その他色々、、、がいつの間にか溜まっていた。そして今朝、とうとう彼にキレてしまった。彼が大したことをしたわけではない、ただ、生卵とゆで卵を間違って私に渡しただけ。手が少し汚れただけ。でも、ちゃんと左の卵は生卵だから気をつけてって言ったのに。やっぱり彼が悪い。キレたくもなる。

「はぁ。」
ため息をつくと、スマホが震えた。彼からのメッセージだ。
「今日の朝はごめん。今日はお詫びに美味しいディナーを、と思ったんだけど、仕事終わらなそう。帰り結構遅くなるから夕飯は先に食べて寝ていてください。明日は休みなので美味しい朝ごはんを作ります!」

彼と付き合う前、私は「できる男」と付き合っていた。
「できる男」は、仕事ができる、見た目もいい、話も面白い、分かりやすい「できる男」だった。そんな「できる男」と付き合っていること、付き合えていることが自慢でもあった。
そんな「できる男」に私は簡単に捨てられた。「できる男」にとっては私はコレクションの一つで、かつ、そのコレクションの中でも一番のお気に入りでもなかった。私が少し甘えたい気持ちで「わがまま」を言うと、それがきっかけであっけなく別れを告げられた。

傷心の私を心配した「おせっかいな友達」が開催してくれた「私のための合コン」で今の彼と出会った。
彼は出会ったときから、可愛く言えば「おっちょこちょい」だった。飲み会に2時間近く遅れてきたのだ。集合場所の駅名の漢字を読み間違えて違う駅に行ってしまって。ありえない。
彼は変わっていた。
飲み会の翌日、社交辞令で交換し合った連絡先に彼からメッセージが届いた。
いきなり「大好きです。」から文章が始まっていた。少し引いた、そして少し笑ってしまった。中学生でもこんなメッセージは送ってこないだろう。この「大好きです。」から始まるメールは数カ月続いた。
「大好きです。」の後に続く内容は、彼の日記みたいなものだった。散歩の途中で会った犬が可愛かったとか、雲ひとつない青空の青が濃くてキレイとか。彼の日々感じる好きなものが綴られていた。
数カ月、そんな「大好きです。」から始まるメールが続いた。私は「大好きです。」から始まるメールにもすっかり慣れ、メールがちょっと楽しみになっていた。たまに返事もした。そんなある日、食事へのお誘いメールが届いた。「めちゃくちゃ美味しい蕎麦屋を見つけました!一緒に食べに行きませんか?」
私は、OKしてしまった、何となく。
結果的に私と彼は付き合うことになった。お蕎麦が本当に美味しかったのと、日本酒がこれまた美味しかったのと、久しぶりに酔っ払って気分が良かったのと、彼の優しい笑顔と、変な勢いと。
付き合って分かったが、彼は「おっちょこちょい」だけではなく、間が悪いというか「外れ」を引きやすいところもあった。
彼は私をよくデートに連れ出してくれたが、ちょくちょく「できる男と一緒に行った場所」とかぶった。そんな場所に行くたびに私は「できる男」のスマートな振る舞いを思い出したりして、少し心がチクリとした。彼はどうかと言えば、「スマート」とは程遠かった。テーマパークに行けば「私の目の前でソフトクリームを2つ同時に落とす。」「お化け屋敷で私よりも叫ぶ。」など、よくもまあ次から次へと失敗できるなあという感じ。そのたびに彼は笑い、私も笑った、いや苦笑いかな。
そんなことを思い出しながら私はコンビニで買ったお弁当をササッと食べてシャワーを浴びて、早々に眠りについた。「明日は彼に謝ろう。優しくしよう。」と心に誓って。

「痛っ!」
小さな悲鳴と甘い香りで私は目が覚めた。
ダイニングに行くと彼が指をくわえて立っていた。まるで小学生のたたずまい。
「指、ちょっと切っちゃった。」
彼は少年の笑顔で言った。
テーブルには、甘く柔らかそうなフレンチトースト、ベルガモットの香り漂うアールグレイ、そしてマンゴー、パパイヤ、ドラゴンフルーツ等の南国系のフルーツが並んでいた。
「全部好きなもので揃えてみたよ!どう?」
フレンチトースト、アールグレイ、南国系フルーツ、確かに私の好きなものばかりだ。
テーブルを見回すと見慣れないヨーグルトがあった。
「何これ?」
「ふふふっ。よくぞお気づきで。南国系のフルーツ好きにピッタリのトロピカルヨーグルト!しかも体にもいい!すごいでしょ!」
大人の小学生は笑って言った。どうだー、と言わんばかりに。
私は小学校の先生のように、言い聞かせるように言った。
「これ、『トロピカル』ではなくて『トリプル』です。だいたい『ト』と『ル』しか合ってないじゃない。トロピカルフルーツの絵もないし。何をどう読んだら間違えられるの?」
「またやっちゃった!昨日に引き続き!」
彼は、オーバーに頭を抱えた。そして笑った。
私もつられて笑った。ふたりで笑った。
「トロピカルヨーグルトじゃないけど体にはいいから食べてよ!健康第一!」
彼は笑顔で言った。

私は彼が好きだ。この人でよかった。この人がよかった。彼は常におっちょこちょいだが常に一生懸命だ。色々ズレているが私に対してはブレない。
ちゃんと好きでいてくれている。優しい海を用意してくれている。私は彼の前では「喜怒哀楽」をなんの足かせもなく自由に表に出せる。そんなことは以前はなかった。ほんのちょっとだけ泣きそうになった。
「いつも私のそばに居てくれてありがとう。私をしっかり好きでいてくれてありがとう。
ヨーグルト一緒に食べよ。お願いだからあなたもずっと健康でいてね。」
彼は少し驚いていた、そしてまた笑った。
「よかった、一緒に食べよ!」
ずっとこの笑顔と一緒にいたい、強く思った。
新しい二人の朝が始まった。


■トリプルヨーグルトの恋 僕編 

「あー失敗した、何であんなことしちゃっちゃったんだろう。」
僕はつまらない事務所類を作成すべくキーボードを叩きながら「今朝の出来事を思い出しては後悔する」のループを繰り返していた。
彼女と同棲して3ヶ月。僕ののおっちょこちょいな行動や言動で彼女がイライラを溜めているのは分かっていた。仕事もうまく行ってないみたいだったし。僕なりに気をつけていた。でもやってしまった。そして今朝、とうとう彼女はキレてしまった。僕が大した間違いをしたわけではない。左の卵と右の卵を間違えただけ。ゆで卵の代わりに生卵を渡しただけ。ああ、やっぱり僕が悪い。キレたくもなるよね。

「はぁ。」
ため息をついて、キーボードの手を休めた。僕はスマホを取り出し彼女にメッセージを送った。
「今日の朝はごめん。今日はお詫びに美味しいディナーを、と思ったんだけど、仕事終わらなそう。帰り結構遅くなるから夕飯は先に食べて寝ていてください。明日は休みなので美味しい朝ごはんを作ります!」

彼女と付き合う前、僕は「できる男」を目指していた。
僕の考える「できる男」は、仕事ができる、オシャレで見た目もいい、話も面白い、そんな分かりやすい「できる男」。相手が自慢したくなるような「できる男」。でも、無理だった。僕は、可愛く言えば「おっちょこちょい」なのだ。
そんな「できる男」を目指した「おっちょこちょい」な僕は、何人かとお付き合いはしたが結局無理がたたって、どの人にもあっけなく別れを告げられた。しょうがない。
そんなとき傷心の僕を心配した「おせっかいな友達」が開催してくれた「僕のための合コン」で今の彼女と出会った。
彼女は出会ったときから、よく言えば、いや控えめに言っても「女神」だった。ピンと来た、何かが。ズキュンと刺さった、何かが。飲み会に2時間近く遅れた事をあの時ほど後悔したことはない。まさかそんなときに限って集合場所の駅名の漢字を読み間違えて違う駅に行ってしまうなんて。ありえない。

彼女は女神だった。けど、少し悲しそうだった。なんとなく察した。僕はそういうことには勘がきく。僕は勝手に彼女を笑顔にすると決めた。あと、「できる男」になる作戦をやめた。そもそも2時間遅刻の男だし。もはや「できる男」は無理。「前向きに行動、でもありのまま作戦」に変更した。それで駄目なら結局「女神」とも長続きしないから。
飲み会の翌日、社交辞令で交換し合った彼女の連絡先にメッセージを送った。
いきなり「大好きです。」から文章を始めてしまった。引かれるかな?とも思って消そうとしたけど、「ありのまま作戦」なのでそのまま送った。中学生でもこんなメッセージは送らないだろう。この「大好きです。」から始まるメールを数カ月送り続けた。
「大好きです。」の後に続く内容は、僕の日記みたいなものになってしまった。いきなり口説くとかできないから。いい文章も思いつかないし。ただ、嘘は無いようにした。散歩の途中で会った犬が可愛かったとか、雲ひとつない青空の青が濃くてキレイとか、僕の日々感じる好きなものを書いて送った。少しでも共感してくれるといいなと思って。
数カ月、そんな「大好きです。」から始まるメールを送った。僕は「大好きです。」から始まるメールを書くこと自体が楽しくなってきた。たまに返事もくれるし。ある時、自宅の2つ隣の駅を散歩しているときにふらりと蕎麦屋に入った。美味しいお蕎麦だった。僕は勇気を出して、でもありのままに食事へのお誘いメールを送った。「めちゃくちゃ美味しい蕎麦屋を見つけました!一緒に食べに行きませんか?」
彼女は、OKしてくれた、何でだろう?
結果的に僕は彼女と付き合うことになった。お蕎麦が本当に美味しかったのと、日本酒がこれまた美味しかったのと、久しぶりに酔っ払って気分が良かったのと、彼女の優しい笑顔と、それを見てテンションが上がって変な勢いでの告白が良かったのかもしれない。神様ありがとう。
付き合ってわかったが、彼女は分かりやすいというか、前の男を少し引きずっているようだった。デートスポットの話をしていると表情が曇るときがある。ピンと来た。分かりやすい「女神」。
僕は彼女をよくデートに連れ出したが、ちょくちょく「前の男と一緒に行った場所」にあえて連れ出した。「女神」の中から「悲しい思い出の場所」を消したかった。楽しい場所に変えたかった。でも、そんな場所に行くたびに僕は「おっちょこちょい」だった。テーマパークに行けば「彼女の目の前でソフトクリームを2つ同時に落とす。」「お化け屋敷で彼女よりも叫ぶ。」など、我ながらよくもまあ次から次へと失敗できるなあという感じ。でもそのたびに彼女は笑ってくれた、僕も笑った、ん、彼女は苦笑いかな。
そんなことを思い出しながら、キーボードを叩き続けた。なんとか仕事を終え、自宅近くのスーパーに立ち寄った。「明日は彼女の好きなものだらけの朝食にしよう。」
フレンチトーストやらアールグレイやらパパイヤ等のトロピカルフルーツやら彼女の好きなものを探してはカゴに入れた。
ヨーグルト売り場に行くと顔見知りのおばちゃん店員が商品を並べていた。
「あら、今日も遅いわね。」
「相変わらず忙しくて。」
ちょっとしたコミュニケーション。
「あっ。」
おばさん店員は何かを思い出したように声を出した。
「これ、新商品。トリプルヨーグルト。体にいいのよ。いつも帰り遅いんだしこれ食べなさい。」
「いや、僕、まだ若いですし。」
「何言ってるの。若いうちから体を大事にになきゃ駄目よ。健康じゃないと何やっても楽しくないわよ。」
更に畳み掛けるおばちゃん店員。
「そうそう、あなた、あの可愛い彼女と楽しく暮らしたいでしょ。健康じゃない男は捨てられるわよ。女の本能で。そうよ、彼女と一緒に食べなさいよ。健康第一!」
確かに体に良さそうなヨーグルト。おばちゃん店員の言う通り彼女とずっと一緒にいたい。健康でいたい。いつまでも楽しくデートしたい。でも、明日の朝食は彼女の好きなものだけにしたい。うーん。トリプルヨーグルトかあ。トリプルヨーグルト、トリプルヨーグルト、トロピカルヨーグルト!お、いけるかも、いや強引か。でも、読み間違え王の僕なら有り得そうな間違え。いけるかも!
「そうですね。健康目指します!4つぐらいください!」
「そうこなくっちゃ!彼女にもよろしくね。」


「痛っ!」
小さな悲鳴を上げてしまった。余ったフルーツを切っていたら指を切ってしまった。おっちょこちょい。
ふと目線を上げると彼女がダイニングに起きて来ていた。僕は指をくわえて立っていた。まるで小学生のたたずまい。
「指、ちょっと切っちゃった。」
僕はちょっと恥ずかしくて照れ笑いした。
よかった、なんとか間に合った。
テーブルに、甘く柔らかそうなフレンチトースト、ベルガモットの香り漂うアールグレイ、そしてマンゴー、パパイヤ、ドラゴンフルーツ等の南国系のフルーツを並べておいた。
「全部好きなもので揃えてみたよ!どう?」

彼女が微笑んだ。いい流れ。彼女はテーブルを見回すと例のヨーグルトに目線を止めた。
「何これ?」
「ふふふっ。よくぞお気づきで。南国系のフルーツ好きにピッタリのトロピカルヨーグルト!しかも体にもいい!すごいでしょ!」
僕は笑って言った。どうだー、と言わんばかりに。
彼女は小学校の先生のように、言い聞かせるように言った。
「これ、『トロピカル』ではなくて『トリプル』です。だいたい『ト』と『ル』しか合ってないじゃない。トロピカルフルーツの絵もないし。何をどう読んだら間違えられるの?」
「またやっちゃった!昨日に引き続き!」
僕は、オーバーに頭を抱えた。そして笑った。
彼女もつられて笑ってくれた。ふたりで笑った。
「トロピカルヨーグルトじゃないけど体にはいいから食べてよ!健康第一!」
僕は笑顔で言った。

僕は彼女が好きだ。この人でよかった。この人がよかった。彼女は僕のありのままを笑ってくれる。優しさの海を用意してくれている。彼女は常にしっかり者のようで弱いところもある。でも弱いところもさらけ出してくれる。僕の前で「喜怒哀楽」をちゃんと見せてくれる。特に笑顔が最高!ほんのちょっとだけ泣きそうになった。
急に彼女が僕をまっすぐ見た。
「いつも私のそばに居てくれてありがとう。私をしっかり好きでいてくれてありがとう。
ヨーグルト一緒に食べよ。お願いだからあなたもずっと健康でいてね。」
僕は少し驚いた、そして歓喜した!そしてまた笑った。
「よかった、一緒に食べよ!」
ずっとこの笑顔と一緒にいたい、強く思った。
新しい二人の朝が始まった。




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