output43’s blog

誰かに都合よくいい感じで見せたい雑記

おじいちゃんと放物線

今週のお題「おじいちゃん・おばあちゃん」

あれは小学校4年生の冬のこと。
僕と友達3人は冬の冷たい風が吹く中、町内の公民館に向かっていた。公民館の小さなグラウンドでサッカーをするために。
寒いのにね、小学生って元気!

行く途中、駄菓子屋に寄った。僕は当時流行っていた「ラーメンアイス※」なるアイスを買った。
寒いのにね、ホント小学生って元気!!

※ラーメンアイス・・・バニラのアイスが麺状になっているアイス。ナルトも入っていてラーメン風に見えるアイス。

公民館に着くと先約がいた。小さなグラウンドの端っこの方でおじいちゃんがゲートボールの練習をしていた。

そのグラウンドはボール遊びは禁止されてはいなかったのだけど、当時、公園でのボール遊びがすごい勢いで禁止されていたこともあり、

「なんか、あのおじいちゃん、サッカー始めたら文句言ってくるかも。」

とちょっと警戒モードになった。

ゲートボールの練習の邪魔にならないように。
なるべく怒られないように。

僕らは、おじいちゃんからできるだけ離れて、まずは腹ごしらえ、駄菓子屋で買ってきたお菓子を食べ始めた。僕は1人アイスを食べる。
他愛もない話をしながらお菓子を食べていると、どうしたことか、おじいちゃんがこっちに向かってきた!

「やばい。サッカーボール持ってるから『ボール遊びするんじゃないぞ!』って注意しに来たのかも。」

僕らの緊張は高まった。

ゆっくりとこっちに向かってくるおじいちゃん。
気のせいか、僕の方に向かってくる感じのおじいちゃん。
気のせいだよね?
あれ、なんか僕見てるぞ!?
んんんんんん!?!?

どーん。

おじいちゃんは、座ってアイスを食べている僕の前に立った。

きゃあー、怒られるー、まだ、サッカーしてないのにー(ドキドキドキドキ)

おじいちゃんは言った。とても優しい口調で。

「寒いのにアイスを食べているのかい?」

あれ?怒られない。

よーくみたら、おじいちゃん優しい顔している。
見た感じ70歳ぐらい。白髪。細身。杖は使っていないけど、しっかり走ることはできなそうで、小走りぐらいまでしかできなそうな感じのおじいちゃんだった。

「このアイス、流行っているんです。」

「へー、そうなのかい、寒いのにお腹を壊さないといいねえ。」

冬の寒空の下、アイス談義に花を咲かす小4と老人。
和やかな雰囲気。
が、また、僕らに緊張が走ることになる。

「今からサッカーをやるのかい?」

きたあああああ。やっぱ怒られるのかああああ。
でも、ここのグラウンドはボール遊び禁止されてはないぞ!
おじいちゃんだけのものじゃないぞ!
なんて思いながら、僕らは、

「はい。。。」

と恐る恐る答えた。

僕らの元気のない返事を聞くと、おじいちゃんは想像してなかった言葉を返してきた。

「よかったら混ぜてくれないかな?」

え?
ええ?
ええええええええええええええええええ!?!?
おじいちゃん、サッカーやりたいの??
っていうか、できるの???

僕ら小4軍団の頭には、同じ「?」がバンバン浮かびまくっていた。

「だめかな?」

優しい口調で、少し心配そうな顔をして聞いてくるおじいちゃん。

「空気を読む。」

とはこのことであろう。
この頼みを断ったら、なんか気まずい感じになりそう。優しいおじいちゃんにすごい悪い気がする。
僕ら小4軍団は、お互いに言葉を交わすことなく、無意識化で相談して決めた。

「いいですよ。一緒にやりましょう。」

僕らはグーパーをしてチーム分けをした。

「おじいちゃんチーム3人」V.S.「僕のチーム2人」

年齢差60歳(推定)のサッカー、キックオフ!

そのグラウンドにはサッカーゴールなんていう立派なものがなかった。なので、グラウンドの両端にある幅1.5m×高さ1mぐらいの柵をゴールに見立てて

「柵にボールが当たれば得点!」

というルールだった。

小4軍団は敵と味方に分かれてはいたが、気持ちは1つだった。

「おじいちゃんにゴールを決めてほしい!!」

ただ、
社長に接待をするかのように、
赤ちゃんをあやすかのように、
おじいちゃんに「あからさま」にパスを回しすぎるのも失礼かな、とも思っていた、みんな、無意識化で。

僕らはそれなりにボールを取り合った。ときに攻撃、ときに守備。一進一退の攻防。ただ、最後には「おじいちゃんチーム」にボールを奪われる。そして、おじいちゃんにパス。おじいちゃんシュート!
この流れを、小4軍団は一切の相談なしに繰り返した。

おじいちゃんシュート!
ボール、コロコロコロ。
柵(ゴール)まで届かず。。。

おじいちゃんシュート!
ボール、コロコロコロ。
柵(ゴール)の外側に。。。

この流れを何度も繰り返した。
なかなか柵に当たらない(ゴールにならない)。

でも、僕らは諦めなかった。希望を捨てなかった。
そして、その時は訪れた!!!!

友人がおじいちゃんにパス。
おじいちゃん、シュート!!!
なんと!!!
ボールが浮いた!!!!!
ちょっと低めの放物線を描いたあとボールは柵(ゴール)に当たった!

ゴオォォォォォォォォォォォォォル!!!!


僕らはおじいちゃんのもとに走った!
味方チーム、敵チーム関係なくおじいちゃんのもとに駆け寄った!

「おじいちゃん、ゴール!」
「おじいちゃん、すごい!!」
「おじいちゃん、ボール浮いたよ!!」

おじいちゃん、めっちゃ笑顔!
小4軍団、めっちゃ笑顔!
みんなでハイタッチ!

公民館の歓喜!!!


この後、まだ、サッカーを続けたのか、どうやっておじいちゃんと別れたか、あまり覚えていない。

今も鮮明に思い出せるのは、

小4軍団の無意識化の一体感
おじいちゃんの蹴ったボールのきれいな放物線
おじいちゃんの笑顔
友達の笑顔

寒空の下、幸せな時間だったな。

そして、あらためて思う

小4軍団、めっちゃいい仕事したな!
偉いぞ自分!偉いぞ友達!

おしまい。