output43’s blog

誰かに都合よくいい感じで見せたい雑記

紙パックの牛乳

今週のお題「感動するほどおいしかったもの」

小学校4〜5年生くらいのとき、家族で伊豆のサイクルスポーツセンターに行った。

そこには変わり種の自転車(横並びで2人乗りできる自転車等)があったりして、自転車に関連するもので遊べるのだけど、その中に

・1周5キロくらい

・アップダウンあり

・ただそこを自転車で1周する

コースがあった。

で、そのコースに僕と父は挑戦した。炎天下、ドロップハンドルの自転車を2人並走して漕ぎ、ただただコースを進んでいく。はじめは平坦な道だったりで順調だったのだけど、途中に「心臓破りの坂」なるものが出てきた。お約束。

「うへー」と思ったけれど、父が

「プロの自転車の選手はこんな坂は簡単に登っちゃうんだよ。」と教えてくれた。

若かった僕は、

「最後まで足をつかずに登りきる!」

と宣言し、ひたすらペダルを踏みまくった。父を引き離し、坂をぐんぐん登る僕。

最後まで地面に足をつかずに完走!

とは結局ならなかったのだけど、何回か足をついて登りきった。遅れて登ってくる父。

「〇〇(←僕の名前)、すごいね。お父さんは全然登れないよ。」

「このくらい、どうってことないよ。」

父に褒められて、調子に乗る僕。

その後、再び2人で並走し、無事5キロのコースを完走。母に迎えられ自転車を返却するとそこに紙パックの自動販売機があった。いつもは甘いジュース系を飲んでいたけど、その日は汗だくでのどがカラカラだった僕は「牛乳」を選んだ。

すごく美味しい!!!

「すごい美味しい!もう1個飲みたい。」

もう1個買ってもらい、今度は少し味わいながら飲んだ。

「牛乳、美味しいよ!!」

牛乳にテンションが上がっている僕を見守る父と母。

「〇〇(←僕の名前)、すごいんだよ。心臓破りの坂、ぐんぐん登るんだよ。もう体力では勝てないな。」

牛乳を飲んでいる僕を見ながら、父は母に言った。なんか嬉しそうだった。父は優しい人で普段も笑うことは普通にあったのだけど、見たことのない笑顔だった。穏やか、充実、暖かい、うんうん、みたいな笑顔。

僕はほんのちょっぴりのさみしい気分と、それを全然忘れるくらい誇らしげな気分で牛乳を飲んだ。美味しかった。

時が経ち、父は旅立ち、僕は父になった。あの時の父の笑顔、分かってきた気がする。牛乳飲みたくなってきた。

 

おしまい。